医療法人のメリット

1.社会的信用の向上

法人の会計を採用することで適正な財務管理ができるようになり、金融機関等に向けた対外的信用が向上します。

2.事業の展開

分院展開や有料老人ホーム、高齢者専用賃貸住宅の開設といった介護保険事業等への進出ができるようになります。
尚、医療法に規定されてない業務を行うことは禁じられています。

3.事業承継が簡単

個人事業の場合、相続が発生した場合、死亡した医師もしくは歯科医師の個人診療所は、これを廃止しなければなりません。
相続人が引き継ぐ場合であっても、その方が新たに診療所を開設しなければならず、事業承継の際には煩雑な手続きが必要となるとともに、相続税の問題も発生してきます。しかし、医療法人の場合、たとえ理事長が死亡しても、法人のほうは継続するため、新たに理事長を選任するだけで済みます。
また、基金拠出額が拠出者の財産評価額になるため、個人事業主と比べて、事業承継、相続対策等を計画的に進めやすくなります。

4. 節税効果がある
  • 税率が低くなる

個人事業の場合の最高税率は、所得税と住民税を合わせると50%であるのに対し、法人化すると法人税と地方税を合わせても30%程度に収まります(年間800万円までの利益の部分に対しては20%程度)。

  • 給与所得控除を利用できる

個人事業の場合には、院長自身の「人件費」という概念が存在しませんが、法人化すると院長(理事長)の人件費を「役員報酬」として、法人の経費とすることができます。
さらに、この役員報酬は院長自身の「給与所得」に該当するため、支給額から「給与所得控除額」を差し引いた額に所得税と住民税が課税されることになります。(平成24年税法改正により給与所得控除の上限は245万円と定められています。)

  • 理事長以外の役員(非常勤理事等を含む)にも役員報酬を支給できる

医療法人の役員は医療法人の経営に参画されることになり、経営上の責任も負うことになるため、たとえば勤務の形態が非常勤であったとしても役員報酬を支給することができます。 その結果として、院長個人に集中していた所得を税率の低い他の役員に分散することが容易になります。

  • 退職金の損金算入が可能になる

個人事業の場合には税法上、院長自身と生計を一にする親族への退職金の支払いは認められていませんが、法人化すれば給与の支払いを受けている院長およびその家族に退職金を支払うことができ、法人として損金処理をすることが可能になります。

  • 生命保険を利用した節税ができる

個人事業の場合には、院長自身の生命保険料をいくら支払っていても、所得控除で年金保険料を含めて最高10万円までしか控除されません。
しかし法人化すれば、院長を被保険者として法人名義で契約することにより、支払った保険料の半額を法人の損金として処理することができます。

5.リタイア資金の形成効果がある

医療法人には少なからず節税のメリットがあります。
しかしながら、よく見かける「医療法人を設立することによって年間○○万円の節税!」と謳うシミュレーションには、次のような疑問が生じます。

  • 医療法人を設立することによって毎年の個人の年間可処分所得(自由に使えるお金)は減少し、その分は最後に役員退職金として個人が受け取ることになるが、その高額な役員退職金に対する税金が考慮されていない。(単年度の税金の比較のみとなっていることが多い)
  • 医療法人を設立すると院長も厚生年金に加入することになるが、その厚生年金の支出や受給が考慮されていない。(税金のみの比較となっていることが多い)

このような疑問点を踏まえて、医療法人を設立するのが有利かどうかは、年間の節税額がいくらであるかというよりは、医療法人の税法上の恩典を活用して、A個人でずっと医院を営んでいる場合とB医療法人を設立して承継や解散(承継者が見つからない場合)のタイミングでリタイアし、退職金の支給を受ける場合(退職金の税金を考慮)を比較して、どれだけ多くのお金を残せるかで判断すべきであると考えます。

当事務所では以上のような点を考慮に入れたシミュレーションを行っています。 これによって医療法人を設立することによって、どれだけ多くのお金を残せるかをご判断頂けます。

医療法人のデメリット

1.社会保険料の増加

法人化により社会保険が強制適用となり、一定の条件を満たした役員、および従業員は健康保険(協会けんぽ・医師国保・歯科医師国保)・厚生年金に加入しなければなりません。
そのため、その分の社会保険料の支出(協会けんぽと厚生年金に関しては、保険料は法人と従業員が折半負担)が増加します。

2.可処分所得の減少

院長個人は、原則として法人から役員報酬を受け取ることになり、役員報酬以外の資金を自由に使用することはできなくなります。
もし、院長個人の資金繰りのために医療法人からお金を借りた場合には、利息を付けて医療法人に返済しなければなりません。

3.届出などの手続きが発生

役員を変更した場合は、役員変更登記、決算終了後には、資産の総額の登記、都道府県知事への事業報告書等の提出の必要が生じます。
役員を変更した場合は、役員変更登記、決算終了後には、資産の総額の登記、都道府県知事に事業報告書等を提出しなければなりません。

4.解散には県知事の認可が必要

株式会社(MS法人)であれば、いつでも法人を解散させたいときにそうすることができます。
しかし、医療法人の場合は、承継者がいなくて診療所を廃止せざるを得ないなどの正当な理由があることを前提に、県知事の認可を受けなければ解散はできません。

5.医療法人解散時の残余財産が国等に帰属

医療法人が解散した場合、残余財産の帰属先は国、地方公共団体等に制限されているため、個人が受け取ることはできなくなります。
ただ、散時に役員退職金をご支給いただいて残余財産が発生しないように、医療法人の“内部留保額”を毎年会計事務所とご確認のうえコントロール・メンテナンスしていただくことにより、このデメリットは容易に避けられます。逆に医療法人の内部留保額を毎年コントロール・メンテナンスできないのならば、このデメリットは大きなものとなってきます。